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マーケティング

ジャパネットの原点

日経スタイル記事
ウケる!やっぱり原体験があるんだね
というか、カメラ屋だったんだあ。
昔は現像する手間があったから面倒だよね。
嬉野温泉だって。
40までやってたのー。二度ビックリ。
最後の仕事感は、当たり前に言われる事だが、重みが違うね

信販売大手ジャパネットたかた。前社長の高田明氏はテレビ通販王国を一代で築き、お茶の間の人気者ともなりました。朝から晩までテレビカメラの前に立ち続け、「伝える」ということを追究してきた高田氏。通販を手がける前、団体客の観光写真を15年間にわたって撮り続け、「1人の顧客に何枚も写真を買ってもらうには、どうすればいいのか」と工夫を重ねてきたことが、ビジネスの原点となったと振り返ります。


この時に今につながるプレゼンテーションのポイントなどをお客さんから学びました。観光写真を撮るというのは「写真を撮って売ればいい」だけでは済まないのです。まず俊敏さが求められます。宴会が始まって30分もたてば酒が回って人びとが立ち上がって、ばらばらになり始めます。それまでの30分間にどれだけスナップを撮るかが勝負になってきます。時間との戦いです。

 第2に「いい写真」を撮らないと買っていただけません。下手なカメラマンはお客さんに声をかけきれないから、お客さんが膳を見ている様子ばっかりを撮ってしまう。特にご婦人は顔をきれいに撮らないと絶対買ってくれないから、そんなポーズは売れません。

 だから私は声をかけたのです。「こっち向いて~」「ほら、こっち向いて笑顔をください~」って。講演などでこの時の経験で僕の声が高くなったって冗談を言うのですが(笑)、呼びかけられたお客さんがこちらに視線を向けた時がシャッターチャンスです。すかさずパチッと撮る。そんな写真は次の朝、必ず買っていただけました

 現場でいい写真を撮らないと、絶対に買ってもらえない世界ですから、声かけのタイミングなどは15年間、一生懸命、工夫して自分なりのコツをつかみましたね。声をかけられない場合はうまく撮影できないことがほとんどでした。

 団体客に1人で複数買ってもらうためにはどうすればいいかということも自分なりに工夫しました。30人の団体で1人1枚しか買わなかったら30枚しか売れない。1人で2枚、3枚と買っていただくにはどうしたらいいかというと、カット数を増やして撮ればいいことに気づきました。

例えば、1人で食べている人の周りに他の人を呼んでグループで撮ったり、配膳待ちの縦列をグループで撮ったり、とかです。朝見てみたら、自分の写っているカットがいくつもあれば、買おうという気がそそられるでしょう。それで30人でも60枚売れるということになるのです。

 もっと買っていただくにはどうしたらいいだろう? 出てきた答えが集合写真です。宴会に行く前に、ツアーの添乗員や宴会の幹事と交渉し、集合写真を撮る約束をするのです。「歴史とロマンの島 平戸」とかの文字看板を入れた見本の写真を持っていって関心を引きました。せっかく現像したのに売れないリスクももちろんあります。「残っても構いませんから撮らせてください」と頼んで撮影するんですが8割の人は買ってくれました。

 集合写真が8割売れて、スナップ写真が1人2カット売れ、30人の団体でも多い時には5万円の売り上げになったこともあります。ビジネスというのは、いい物を提供し、自分の頭でどの程度買っていただけるかと考えて結果を出していくというプロセスだということを知り、とてもいい勉強になりました。

■逆境のなかにも成長のヒントはある

 商品の品質を上げたり、いい写真を創り出していったりする努力で結果はいかようにも変わってくる。だから「人口が少ないから商売が成り立たない」とすぐ諦めるのはおかしいのです。「日本は少子高齢化だから先がない」と短絡的に考えるのではなく、ビジネスというのはそんな環境の中にも成長のヒントがあるのではないかと考えるところに面白みがあります。30人の団体にいかに90枚の写真を売るかと考えている先に、突破する知恵が見えてくるものなのです

同じ商品でも関西で紹介するのと、東北で紹介するのでは売れ行きが違う。東北でも秋田、宮城など県民性の違いで、そこには購買行動に違いが出る。そうしたことが温泉写真の営業で頭に入っていました。知らず知らずのうちにマーケティングの勉強をしていたのです。

 職業や団体での違いもある。一番写真を買われるのが戦友会でした。命をかけて戦った仲間だから一体感があって戦友との写真を大事にしてくれました。50人の団体で200枚、300枚と売れました。後ろ姿が少し写っているだけのカットでも買っていただいたことがあります。次に売れたのが婦人会でした。一方、売るのが難しかったのは公務員でした

観光写真の販売を通じて、顧客の属性や出身を基にマーケティングしていく術が身についた」という

 そういう具合に顧客の属性や出身を基にマーケティングていく術がいつの間にか身に付きました。これが通販の世界に入った時にプラスになりました。

通販の威力に目覚めたのは地元のラジオ番組にたまたま出演した時の経験からです。ラジオで5分間宣伝しただけなのに、1万9800円のカメラが50台も売れたのです。当時の私の店の1年分の販売台数に匹敵しました。それが全国でなく、長崎県だけで売れた。ラジオに何回か出演するうちに全国のネットを作ろうと思い、カメラ店を弟に譲り、通販で生きていこうと決意しました。その後のことは以前お話した通りです。

 温泉街で学んだ商売の原点とは何か。何事にも、自分が今やっていることに対して意義を見いだすということが、人生では最も大事だということではないでしょうか。若い方に伝えたいのですが、「嫌いな仕事はやらない」では人間の成長はありません。配属先が自分の希望とは違うという理由で仕事が嫌いだと悩む人は考え違いだと思います。

 嫌いだというのは自分の食わず嫌いと同じです。入社して配属されて一生懸命やる人はその仕事を必ず好きになります。たとえば、ジャパネットの新入社員が希望の番組制作ではなく、広報や総務、経理に配属になったとします。「私は広報の仕事は分からない」「経理は知らない」と言っても一生懸命やっていれば、広報の役割とか、労務、総務、経理の役割とか会社にとってものすごく大きいものがあることに気づきます。

 だから、仕事というのは自分が打ち込んでいく中で、自分の内側から好きになっていくものです。世の中の新入社員のほとんどが、そんな風に希望ではない部署に配属されていくのが普通でしょう。与えられた仕事を「好き」にできるかできないか、本気でやれるかやれないか。心の持ち方によって、人生は大きく変わっていくのではないでしょうか。

高田明氏(たかた・あきら)
1971年大阪経済大経卒。機械メーカーを経て、74年実家が経営するカメラ店に入社。86年にジャパネットたかたの前身の「たかた」を設立し社長。99年現社名に変更。2015年1月社長退任。16年1月テレビ通販番組のレギュラー出演を終える。長崎県出身。68歳